- イコライザーってなに?
- 聞いたことあるけど使い方がわからない
- おすすめのEQは?
制作した音楽をMIXする工程で必ず使用するエフェクト「EQ(イコライザー)」ですが、なんとなく目的もなく使ってたりしませんか?
実際にどう音が変わるかは理解していても、感覚で良い音に感じるように適当にやってしまっている人が大半だと思います。
今回は完全に何もわからない状態からでもEQがうまく扱えるようにコツを踏まえて解説していきたいと思います。
- EQの使い方がわかる
- MIXが上達する
- 音作りで失敗しない
現在この記事を書いている僕はDTM歴10年以上で、現在フリーの作曲家としてMIX・マスタリングもしながら曲作りをしています。
初心者の頃は何も考えず適当にEQをやってたくさん失敗した経験があるので、そんな失敗から学んだ基礎的なテクニックをしっかり解説していきます。
EQ(イコライザー)とは?
EQは各周波数帯域の音量を調整して音の質感を変化させるエフェクトです。
同じ周波数が重なり合うとその部分の音量が極端に大きくなったり、位相(波形)がぶつかり合って音が濁ってしまうことがあります。
そのため各楽器ごとに不要な周波数をカット(減衰)したり、足りない部分をブースト(増幅)する必要があるので、MIXの際にはほぼ全てのトラックに使用します。
コンプとの違い
よく間違われるエフェクトに「コンプレッサー」がありますが、こちらは音量を均一にするエフェクトです。
コンプレッサーの中にはマルチバンドコンプレッサーのように周波数を指定したり、アナログタイプによって音質を変化させるものもあるのである意味EQのように使われる種類も存在します。
詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
EQの種類
EQには以下のような種類があります。
グライコは最初から周波数が指定されているので不便に感じるかもしれませんが、種類によってはプリセットのように必要な帯域だけが設定できるので迷うことなく操作がしやすいです。
近年はダイナミックEQ機能が付いた自由度の高いパライコが主流になってきています。
各パラメーターの解説
主にパライコで使用する基本的なパラメーターを解説していきます。
EQでは「カーブ」と呼ばれる線に「バンド」と呼ばれる点を追加して動かしていきます。
バンドに対して設定・確認できる項目が以下になります。
Frequency(周波数)
横軸は周波数(Hz)、縦軸は音量(dB)となっています。
また1000Hz=1kHzと表示されます。
周波数は低音域~高音域までざっくり分類があるので、イメージを把握しておくと処理しやすくなります。
超低音域 | 20~60Hz | 空気の振動が胸に響いて感じる低音で、聴こえるというより感じる帯域。 |
低音域 | 60~250Hz | キックとベースなどが被りやすく、リズムに大きく影響する帯域。 |
中低音域 | 250~500Hz | 多すぎると籠もった音になりやすく、少ないとスカスカな音になる重心のある帯域。 |
中音域 | 500~2kHz | ほとんどの楽器の特徴的な音が詰まっていて、不要な音も必要な音も多い帯域。 |
中高音域 | 2k~6kHz | ドラム、ギター、ボーカルなどあらゆる音の輪郭がぶつかり合う帯域。 |
高音域 | 6kHz~20kHz | 煌びやかな音や耳に痛い音が存在する帯域。 |
Gain(音量)
特定の周波数のバンドを持ち上げると音量が上がり、下げると音量が下がります。
音量は1dBで1.12倍、3dBで1.41倍、6dBで2倍になります。
音量を変化させすぎるとそれだけ音質が劣化したり、位相(波形)ずれが発生するので大きくても6dB以内の調整にしておいたほうが良いです。
Q(幅)→ピーキング(ベル),シェルフ、パス
QまたはBandWidthは周波数の範囲を決める項目です。
Qはピーキング(ベル)タイプのフィルターに使用するパラメーターです。
フィルタータイプ(シェイプ)には以下のような3種類があります。
パス=通す という意味なので、ハイパスはロー(低音)カット、ローパスはハイ(高音)をカット!
EQの使い方とコツ
EQの使い方は以下のとおりです。
一つずつ解説していきます。
全体のバランスを考えて調整する
MIXでは様々な周波数帯域が被って濁った音になります。
これを「マスキング」と言いますが、このマスキングができるだけ起きないように各楽器の周波数を住み分けさせることがポイントになってきます。
例えば低音域で被りやすいキック(ドラム)を60Hz、ベースを80Hzと決めてそれぞれ干渉し合わないようにカットすることでどちらの音も聴こえやすくなります。
ハイハットやシンバルなど高音の担当では低音域は基本的に不要なのでローカットやシェルビングで抑え込みます。
処理自体は1つ1つ行いますが、全体のバランスを考えながら各周波数に満遍なく配置できるよう意識しておきましょう。
ピーキングを使ってカットする
最も有名で一般的な処理方法が騒がしい音を狙ってカットするピーキング処理です。
プロの方のインタビュー記事でも解説されているテクニックです。
やり方は以下のとおりです。
- Q値を狭くする
- Gainを目一杯上げる
- バンドを動かして騒がしい部分を探す
- Gainを下げる
特に等ラウドネス曲線で聴覚的に繊細に聴こえやすい2k~5kHzで使うと効果を発揮します。
EQは基本的にカット方向で使えば失敗するリスクが少ないのでおすすめです。
倍音を加える
倍音は基音に重なって含まれる隠れた周波数です。
倍音を加えると物足りない音に厚みが出るようになったり、EQだけではコントロールしづらい音の変化をもたらしてくれます。
エフェクトで倍音を加える方法は以下のとおり。
- 倍音系プラグイン(Vitamin、RBassなど)を使う
- サチュレーターで歪ませる
- アナログ系プラグイン(SSL、EQP-1Aなど)を使う
デジタルで作られた音源ほどアナログで付加されてきた倍音が足りないことが多いので、積極的に倍音を増やしましょう。
こういったプラグインはほとんどWaves のプラグインバンドルに収録されているのでおすすめです。
≫【2023年】Wavesプラグインバンドルの内容の違いを徹底比較!おすすめバンドル3選
バイパスして変化を確認する
バイパス(エフェクトOFF)を使って元の音からどれだけ変化しているのかを細かくチェックしておくことで、正しい処理ができているか確認することができます。
ただし、EQ前後で音量が少し変わっていることもあるのでオートゲイン機能がない場合はアウトプットのゲインで必ず調整をしましょう。
どんなエフェクトを使ったときでもエフェクト前後の音量の変化を修正する癖をつけておかないと、音量が変化しただけで良い音になったと勘違いしてしまいます。
耳で聴いて判断する自身がない場合はゲインマッチプラグインを利用しましょう。
理想的な音を覚える
参考音源を聴きながらMIXするようにEQも目標設定が重要で、目指したい音を覚えることで適切なEQ処理ができるようになります。
理想的な研究方法は様々なジャンルのプロのステム音源を聴くことです。
ステム音源の入手方法は主に公式から限定公開しているものや人脈等になりますが、一般にはなかなか難しいので、サンプル音源などを参考にするのも良いと思います。
Native Instrumentsから無料のMIX用ステムも配布されています。
まとめ
EQは人やジャンルによって使い方が様々なので理想的な処理をすることはなかなか難しいですが、まずはカット方向で処理できるように練習するのがおすすめです。
他のプラグインと複合的な要素も大きいので、EQだけでなく各プラグインでどんな音の変化が起きるのかも勉強していきましょう。
また参考にする音楽の時代によってもEQのやり方が異なることもあるので、できるだけ新しい情報から学ぶことをおすすめします。
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